逃走 と 逆襲

この前2日連続で血みどろホラー映画を観たのでその感想を。

『シー・ノー・イーヴル 肉鉤のいけにえ』
監督:グレゴリー・ダーク
製作総指揮:ビンス・マクマホン
出演:ケイン
   クリスティーナ・ヴィタル
   マイケル・J・ペーガン
   スティーヴ・ヴィドラー 他
2006年/アメリカ/84分

ホラーと聞いただけでどんな作品かも調べずのこのこ観にいったんですが、そんなことはよくあること。そしてそれが楽しめた作品なら喜びもひとしおというものです。


青少年の犯罪者たちが減刑と引き換えに廃墟と化しているホテルの掃除を行うことになり、そこで散々な目にあってしまい叫び逃げまどうという話。もうホラーとしかいいようのない直球な作品でした。いやいや面白い。


猟奇的殺人者を捕り逃したときに片腕をちょん切られた警官がいたというプロローグ。そんな過去を持つ警官が小僧たちの引率に当たるということで、当然その殺人者が出てくることは間違いないわけです。再会した2人の間にどんな対決が待っているのか!? と当然予測したりするわけですが、それをいい感じに裏切ったりしてくれるわけで。ただの直球ではなく楽しませてくれそうで期待が膨らみます。

正しいスプラッタホラーですが、微妙にずらしているところがワクワクさせる要因ですかね。ジェイソンやレザーフェイスみたいなのがただただ執拗に武器を振り回すだけの作品ではないです。けっこう工夫してますよ。
哀れな被害者たちの殺され方もいろいろで。窓から突き落とされて地面に叩きつけられて即死かと思いきや、更に恐ろしい運命が待っていてうわー勘弁してくれと。殺人者は眼球を穿り出してコレクションしていたりしてあーいやだいやだ。


この殺人者。WWEのレスラーだそうで、製作総指揮の人もWWEの会長だとか。2人目のザ・ロックにはなれそうにありませんが、この会長はまたレスラーを投入した新作映画を用意しているようです。
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「おまえ、脳みそにウジが涌いてるのか?」という言葉を地で行く話。イヤな話だ。


で、翌日見たのが噂の『ホステル』

『ホステル』
監督・脚本:イーライ・ロス
出演:ジェイ・ヘルナンデス
   デレク・リチャードソン
   エイゾール・グジョンソン
   ヤン・ブラサーク 他
2005年/アメリカ/93分

クエンティン・タランティーノが製作総指揮ということでしたが、タランティーノならではとうものはあったのかな? よく分かんないけど。まぁ宣伝は大事ですよね。


公開前から残虐すぎてゴメンみたいな話が漏れ聞こえてきましたが、『ソウ』のシリーズや『テキサス・チェーンソー』なんかに比べるとそれほどでもないような気がします。『ソウ』を観れるならこの『ホステル』も大丈夫でしょう、画的には。けっこう節度のある画作りをしていた印象。指が落ちる瞬間とかは表情にカメラが移ったりしてたからね。
ということで、この作品の恐ろしさはそんな従来のスプラッタ作品とは違う場所にあるんじゃないかと。


ヨーロッパを旅行中の若く軽率な3人のアメリカ男が、女のにおいに釣られた先で酷い目にあう話。酷い目にあう日本人女性らしき2人の女の子も出てくるんですが、もうちょっと役者に気を遣ってくれよと言いたい。イントネーションが微妙な日本語を話してて違和感ありまくり。三池崇史を出演させているくらいだからなんとかできただろうに。


これを観たとき思い出したのが『スクリーム』。あれもジャンル作品の王道を歩んでいるような感じだけど、巧みにずらしたところが面白さだったし。思っていた方向と逆方向へ進んでいくわけではなく、変な角度に進んでいくところがいいのかな。
いまどき予想外の展開って難しいからね。予想外だと言えば言うほど予想しやすくなるというアンビバレンツ。構えさせずに逸らしているのはやっぱり巧さだ。
そしてしっかりとカタルシスがあるところが素晴らしい。最近それが無いホラーって結構あるからなぁ。轢け、轢け! と切に願った観客は私だけではないはず。


おバカな旅行者を笑うのは簡単だけど、あのあからさまに怪しい写メールに希望を抱かなければならない異国で異質の地で自分がどんな状況に陥っているかも分からない不安。残虐シーンばかりに頼った作品ではないですね。

正気な人間たちが作り出す恐ろしさ。
オカルトにもモンスターにもサイコパスにも頼ってないからこそいっそう怖いんだよなぁ。
少なくとも袋いっぱいのチューイングガムと引き換えに殺されてしまうのはとてもイヤだ。

キャビン・フィーバー
監督・脚本:イーライ・ロス
出演:ライダー・ストロング
   ジョーダン・ラッド
   ジェームズ・デベロ
   セリナ・ヴィンセント
   ジョーイ・カーン 他
2002年/アメリカ/93分

で、イーライ・ロス監督の出世作である『キャビン・フィーバー』を借りてきて観た。
観よう観ようと思っていてすっかり忘れていた作品。名古屋で劇場公開してないよね、これ。


若い5人の男女が休暇を過ごす山小屋へやっとこさたどり着き楽しんでいる最中に病気の男がドアを叩いてそれからさぁ大変、という話。


若いグループが車で旅行、というあまりにも王道な導入でしたが、それからの展開は凄まじい。ドアを叩いた男が伝染病を持ち込んでしまうんですが、いやぁそんな展開とは。あらすじとか全然知らないまま観たんでかなり驚きました。途中『変態村』を思い出したりした八方塞がりな状況。これは楽しく恐ろしい。
自分の思っていた幸せな世界がだんだん少しずつ崩れ去っていく。それを惜しむかのように山小屋に戻ってきてしまう若者たち。手遅れになって初めてすべきことが頭の中に浸透していく感じがいいなぁと。


理不尽に無茶苦茶で楽しかったです。オチのしつこさにも感心しました。


この監督は、『ホステル』は『キャビン・フィーバー』とは同じようなホラー・コメディにしたくはなかった、と語っていたそうですが……“コメディ”かよ。
でもちょっと納得できそうかも。少なくとも監督がニヤニヤしながら作品を撮っている姿は想像できます。ブランコの少年とかなんだよあれ。


で、『ホステル』の続編がアメリカでは6月公開。想像力の足りないアメリカ旅行者がまた犠牲になるそうです。今度は女性の3人組らしいですね。
http://www.hostel2.com/


しかし『ホステル』も『シー・ノー・イーブル』も『ソウ』も同じ会社の作品か……。これからの作品も要チェックかな。
http://www.lionsgate.com/index_flash.php