天狗 と 鬼

11月22日は、いいふーふの日ということらしいですが、数日前に読んだ本で知っていました。『骸の爪』です。タイミングがいいというか、シンクロニシティ


友人に『シャドウ』を読まされそうになったので、慌てて積んであった『背の眼』を先週読みまして、いきおいで『骸の爪』も読みました。『九月が永遠に続けば』も積んであるので読まないと。

『背の眼』
著者:道尾秀介
幻冬舎

第5回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞作の『背の眼』。ホラーの名が冠されている賞を獲っただけあってオカルトっぽくはあるんですが、かなりなミステリ。選考委員の綾辻行人が「まさかこの賞の選考で、こんなにも意欲的な本格ミステリに出会えるとは」と言っているぐらいに。個人的にはもっとオカルトが好みなんですがね。

ホラー作家の主人公が最近子供が神隠しにあう事件があった旅先で不気味な声を聞いて友人の霊現象研究家を訪ねたら彼もちょうどその旅先付近の土地で撮られた心霊写真を気にかけていてじゃあそこに行ってみようという話。

けっこうな文量ですが、かなりサクサク読めました。頼りないホラー作家、探偵役の霊研究家とその美人助手のメインキャラクター3人がなかなかいい味を出していて楽しい。民俗学的薀蓄もしっかりしていて読ませますね。

しかし、2つ3つ減らしたほうがすっきりしていいんじゃないかと思うくらい伏線が多すぎ。美人助手の勘がいいっていう設定は無くても成り立つんじゃない、ってくらいに生きていない。これだけネタを盛り込んで最後に纏め上げられれば確かにすごいのかもしれないですが、なんか無駄な装飾に感じられましたね。正直わざとらしい。


しかしけっこう楽しんで読めましたのでシリーズ第2弾の『骸の爪』もすぐ読んだわけです。

『骸の爪』
著者:道尾秀介
幻冬舎

で、『骸の爪』の最初の感想は、装丁に『背の眼』との統一感をもっと出してほしかったなと。
読んでの感想は、『鉄鼠の檻』かな、憑き物落としじみたこともやりますし、といったもの。その後にまだ展開があるのが違うんですがね。そしてまたまた過剰な伏線。こんなにいらないんじゃないのとやっぱり思いますが、これが道尾秀介の味なのかな。

ホラー作家の主人公が仏所で撮った写真の中の仏像が血を流しているのに驚いて友人の霊現象研究家を訪ねたら興味を持った彼とその助手と3人でかつて仏師が行方不明になった事件のあるその仏所へ再びという話。

あぁ、ルビが振ってなかったのはそういうことか。

『背の眼』を読んで、この作者はホラーというよりミステリの作家だなということも分かってますし、そもそも今回はオカルトっぽさもあまりないので、先の想像がしやすい話ではあります。「この世には不思議なことなど何もないのだよ。道尾君」といった感じか。

今回3人のメインキャラクタの心の動きがほとんど描かれていないところが残念。謎を繰り出すのに終始しているのが、それほどのミステリ読者ではない自分にとっては合わなかったかも。頑張って謎を回収していましたが、机上の空論っぽくてどうも納得できないんだよなぁ。


それでもまぁ軽く楽しい作品ではあります。3作目が出たら読みますね。
きっと。