麻酔科医 と 医療問題

ナイチンゲールの沈黙
著者:海堂尊
宝島社

先月だったか『ナイチンゲールの沈黙』を読んだ。
歌の素晴らしい看護士が担当するマセた少年のダメな親父が殺されて犯人は誰だ、ってお話。
“氷姫”を期待していたんですが、前回と同じ田口・白鳥コンビのお話。ちょっと残念。今回は“電子猟犬”加納という男キャラも投入され、ますますぐだぐだになっていきます。相変わらず謎解きという部分があまり強調されていない敷居の低い娯楽ミステリという感じ。魅力は謎より人間模様ですね。ちょっとオカルチックなところもありますが、楽しい作品でしたよ。
難を言えば、“電子猟犬”投入により“火喰い鳥”の味がぼやけてしまったところかな。もう少し“昼行灯”の味がたっているとバランスが良かったかなと思いますが。次はもっと味が調っていることを願いつつ、3作目も期待しています。……出るよね。

そういえば角川からもう新作出るんだよね。はやいなぁ。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4048737392/tanpenyomu-22/ref=nosim

『破裂』
著者:久坂部羊
幻冬舎

そして医療ミステリを消化しておこうと『破裂』を読む。
主人公は、医師たちの過去の失敗を調べ医療を正したいという熱意に燃えるどこかバランスを欠いた麻酔科医。それに今の日本の医療問題はとにかくすべて長寿化が原因なんだからなんとかせんと、という官僚が関わってくる話。
赤裸々な医者たちの告白に眉をひそめつつも読まされました。『廃用身』と同じように少々危ない考えが披露されますが、それを納得させる力があるのは相変わらず素晴らしい。いいじゃん“PPP”。安楽死ガンガンいこうぜ、と思えてしまうからね。
安楽死とか尊厳死ってもう少し積極的に行われてもいいんじゃないかなぁ、と昔から思ってるんですがね。『海を飛ぶ夢』を観たときも、そんなに苦労させなくてもなぁと思いました。

医療過誤については、今自分が健康な立場だから言えるんでしょうが、医者だって失敗はするよな、と思う。患者が失敗を許さない今の状況が隠蔽体質を助長しているとも思う。難しいところではありますが。なんかもう手術ごとに掛け捨ての保険契約でもしてもらうしかないんじゃないの。飛行機乗るときみたいに。


まぁ世の中矛盾だらけだよねー、っていう話。
この前の、奈良の妊婦が死亡した事件もすでに聞こえなくなってきてるし、結局のどもと過ぎればって感じなのかな。ホント誰かが強引に物事をすすめないと世の中変わらないと思いますよ。というわけで“厚生労働省マキャベリ”に結構感情移入しました。


『破裂』の主人公が麻酔医で、『チーム・バチスタの栄光』でも麻酔医が虐げられているような話があった気がしたので検索してみる。

ところが、麻酔科は激務であることや、麻酔科医は一部の外科系医師から低く見られることがあり人間関係が難しいこと、将来開業がしにくいこと、などの理由から麻酔科を志す医学生の絶対数が少なく、麻酔科から他の科へ専門を変える若手医師も後を絶たない。

前回もそれっぽいlことは言いましたが、麻酔科医の仕事は評価されにくい。 たとえば、麻酔科領域でこれがいい、あれがいいといわれていることは、結果としてでてきにくい。2000例しても、生存率としては100例前後の差しかでない

なかなか大変なご様子。
あと麻酔医ではなく麻酔“科”医らしい。確かにググると麻酔科医の方が多くヒットする。“歯医者さん”は別にいいのか?

北里大学医学部


あと麻酔科医とは関係ないけど、知らなかったこととドキドキの記事。けっこうお医者さんのブログって多いね。

当直中の医師は働いてはいけない: freeanesthe
http://yamorimo.cocolog-nifty.com/masui/2006/05/post_9bc2.html


歯科医は多すぎて小児科医は足りないとか目に見える問題だけでも山積みっぽい。医療関係者だけの問題じゃないので、医者も患者も安心できるようになんとかせんとなぁ。
何ができるんだろうかと途方にくれてしまいますが。

チーム・バチスタの栄光
なんか楽しい。

『廃用身』
フェイク・ドキュメンタリーの傑作。

海を飛ぶ夢
いちおう実話らしいよ。