一人 と 二人

『暗いところで待ち合わせ』
監督:天願大介
原作:乙一
出演:田中麗奈
   陳柏霖
   佐藤浩市 他
2006年/日本/129分

なんていうか、この作品で2時間強は無いだろう、と。
不思議と退屈を感じることは無かったんですが、主人公たちの内面をほとんど語らずに、雰囲気の演出だけでよくやったものだと感心。『紙屋悦子の青春』を思い出したり。


というわけで『暗いところで待ち合わせ』を観た。
一人暮らしをしている視覚障害者の若い女性と、眼が見えないのをいいことに彼女の家に内緒で上がりこんで居座っている殺人容疑者の若い男との不思議な共同生活。人を避けて孤独に生きてきた2人を描いた物語。


小説読んだのは結構前だったので、こんなミステリな話だったっけかとビックリ。なんか『恋愛寫眞』くらいビックリしました。覚えてなかったなぁ……写真を見たところで思い出したんだけどね。そうそう、こんなだったと。


原作の淡々とした静かな生活を上手く映像にしていると思うんだけど、必要だったのかな、この長さは。でも過去のエピソードが全くカットされているんだよなぁ、ちょっとこれはツラいな。主人公の2人の深い孤独感はその過去があってこそなんだけど。そのあたりがイマイチ伝わらなかったので、案外軽い感じに見えちゃったかな。
特に男の方の、中国人とのハーフだからってそのあたりを省略しちゃったのは、ちょっと安易すぎ。乙一の小説の映像化を観に来る若い男の客に対する配慮が欠けてるね。同じ人間(日本人)なのにずっと馴染めなかった、ってところは大事なのに。

男は原作どおりのキャラクターのほうが良かったと思います。今ちょうどイジメとか問題になってるし。なんでわざわざ変えたんだろう。

『暗いところで待ち合わせ』
著者:乙一
幻冬舎文庫

パラパラと小説読み直しました。ざっとストーリを追っただけですけど。
展開はほぼ同じですね。

その主人公の2人は田中麗奈と陳柏霖。もう田中麗奈には文句をつけようが無いね。あんまり喋らなくても、アップばっかりでも全然大丈夫。役の幅も広いし女優って感じだ。
で、チェン・ボーリン。『幻遊伝』で田中麗奈と既に競演しているって……あの薬局の店員か?
しかしこの男、必要以上に田中麗奈に接近するので、ギリギリマスターかと笑ってしまったんですけどね。もっと離れてればいいじゃんって。ていうかそんなスリルいらないでしょ、この作品に。


佐藤浩市井川遥岸部一徳と脇を固める俳優はしっかりしているので安心。音を少なく静かにすることで、視覚障害者の生活を表現していたのは巧いと思いました。乙一の雰囲気も出てるし。


まぁだけど、これはちょっと小説の方に分がある感じ。流れも自然だしね。
過去を語らずお父さんを長々と出したあたりも選択を間違ったような気がするし。


コミカライズされたものもありますが、あれはただ漫画化しただけなので、文章を読みたくない人が読めばいいと思います。


そのうち乙一は映画監督に進出かな?

http://www11.ocn.ne.jp/~tcinefes/MMIV/concour3.htm
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061126-00000073-sph-ent

恋愛寫眞
けっこう面白かったんだけどね、これ。