ゆめ と うつつ

『パプリカ』
監督:今敏
原作:筒井康隆
声の出演:林原めぐみ
     江守徹
     古谷徹
     大塚明夫
     山寺宏一 他
2006年/日本/90分

めくるめくイメージの奔流。
そんな『パプリカ』を観ました。
精神治療のために開発された他人の夢を共有できる装置が盗まれた。その未完成の装置が悪用され、他の人が見た悪夢が私の夢に忍び込んでくる。そして現実をも犯していく。


すげー堪能いたしました。
ジャパニメーションのカルトな部分の集大成といった感じ。観ている途中に『千年女優』は当然、『AKIRA』とか『もののけ姫』とか『新世紀エヴァンゲリオン』とか『マインド・ゲーム』とか『イノセンス』とか『頭山』とかいろいろ思い出しましたよ。


いやぁ、アニメって素晴らしいなと。
今年はいろいろ劇場アニメをやりましたけど、やっぱりアニメらしい作品が良いよ。『ゲド戦記』やGONZOの作品が肌に合わなかったのはアニメっぽくなかったからんだよな。アングルやキャラの動き、あのカットのまんま実写に変られるような作品。まぁハリウッドじゃないから仕方ないのかもしれないけど、アニメの意味無いよね、あれじゃ。
それに比べると『時をかける少女』はアニメらしくて良かった。そして今回の『パプリカ』も。鮮やかな色彩と躍動感、不自然さも自然に見せられる力。アニメ万歳ですよ。ていうかマッドハウスすげー。


林原めぐみ古谷徹大塚明夫、そして山寺宏一と声優も磐石の布陣。この安心感は代えがたい。舞台で活躍するような俳優ならともかく、タレントなんかが主演と聞くと期待していた作品ほど不安になるからなぁ。
江守徹はいいよ、うん。『東京ゴッドファーザーズ』のあの3人は良かった。


ストーリーも満足。あの原作をよく90分に組みなおしたなぁと感心。最初のほうでの所長が語る長めの電波台詞を楽しめたなら、あとは一気呵成。このシーンが分水嶺だね。
人形たちが一斉にこっちを向く、巨大な顔が窓から覗く、そんな怖気立つ風景の中を軽やかに活発に駆けていくパプリカ。ホラー的な描写に突拍子の無い画を突っ込ませることによって漂うユーモア。重くもならず軽くもならず、異質な世界が次々と紡ぎだされていく。そして世界を覆う不随な悪夢さえも覆いつくす意思である愛。凄すぎて笑えてきましたよ、久しぶりに。


現実と夢の混じりあいが、そのまんま千葉敦子とパプリカの二面性に対応していて案外話も分かりやすいし。虚実の混淆を描いてきた筒井康隆の世界を見事に映画化したなと嬉しくなってしまいました。
そうそう、「映像化不可能と言われてきた」とかいう修飾はもう止めてくれないかと思う。だれがそんなこと言ったんだよ。『残像に口紅を』くらいのものなら言っても構わないけどさ。

『パプリカ』
漫画:萩原玲二
原作:筒井康隆
トラウマンガ・ブックス

で、映画の後に積んであったコミカライズしたものを読みました。小説はパラパラと再読。漫画と小説だいたい同じ話なんだよね?

書下ろし100ページという触れ込みの第2部が追加さて復刊したものですが、こんななら第2部いらなかったんじゃないという端折り具合。ハリー・ポッターの映画より酷いね。著者自らダイジェストとかいいやがるので救いようが無いというか、出さなくてもよかったんじゃないの?
それに第1部と第2部で絵柄が変わっているのはいいんですが、第2部が山本貴嗣っぽくて笑えました。何でだろう?

巻末に対談が載っているので興味がある人はどうぞ。筒井康隆が夢をメモしていたというくだりを読んで、また『脳天気教養図鑑』思い出しました。なんかこの漫画のどうでもいい知識ってやたらと頭に残っているなぁ。何でだろう?


次のアニメ化は『旅のラゴス』とかか?


あと、オフィシャルサイトが凝ってました。結構気色悪かったですよ。
いちおう壁紙手に入れましたが、作品のカットを切り出したものばかりってのは物足りないですよ。
http://www.sonypictures.jp/movies/paprika/site/home.html


あ、あと、映画は劇場で観ろ、っていうメッセージがあったのかも。

『パプリカ』
原作ですよ。読んどけ。